2017-05-14
2017年5月11日未明
毎週日曜日に私の部屋のドアを叩く男がいる。
最初の2・3日、私はノックされても無視を決め込んだ。
4日目、初めてのノックから1ヶ月経過してから
私はそろそろと足を忍ばせ、玄関まで向かった。
のぞき穴を覗く。
ドアの向こうには黒いキャップを被り、
上下黒のジャージを着た男が伏し目がちに立っていた。
私は息をひそめ、10秒ほどドアの外の男を観察していた。
すると男は突然顔を上げ、ドアの外からのぞき穴を覗いて来た。
(きづかれた)
と私は思った。
ドア越しに目が合っているのかいないのかわからなかったが、
驚いた私はドアから反射的に顔をはなす。
再びそろそろと足を忍ばせ、寝室に向かった。
携帯電話を手に取り、画面を開く。
何の迷いもなく110に発信した。
「いかがなさいましたか~」
妙に呑気な声が受話口から聞こえてくる。
耳に届く以上に、部屋に響いているように感じる。
場にそぐわない音量に少し不快感を覚える。
「実は、1ヶ月ほどの間、毎週日曜日に私の家に来る男がいるのです。見知らぬ男で、今まさに私の家の前にいるんです」
息継ぎせず一気に喋った。
思った以上に早口になったし、思った以上に焦った様子の声が出た。
そしてコソコソと喋った。
喋りながら同時に、私は毎週同じ男が来ているか確認しているわけではない、
顔をきちんと確認したわけではないので見知らぬ人かどうかも明確ではない。
とも考えた。
だが、先ほどまさにドア越しに確認した男は、のぞき穴からこちらを見ていたのだ。
それはフツウのことではないだろう。
「住所を教えてもらえますかぁ。管轄の署につなぎますのでぇ」
再び呑気な声で電話の先の女性が言う。
再び私は不快に思いながら、部屋の住所を伝える。
早口にならないように気を付けたが、2か所聞き返された。
呑気な声で。
ようやく『管轄の署』につながれた電話には若い男が出た。
「どうされましたか~」
再び同じことを聴かれる。
同じことをまた説明しなくてはならないのかと感じたが、ここで何かモノを申している場合でもないと思い同じことを答える。
「お宅さんの住所はもう聴いてるんですがねぇ。お宅の近くでそういう怪しい奴がいるっていうツイートが1つもないんですよねぇ」
私は一瞬考えた。
この警察官と思われる男は何を言っているんだ?
「ツイート?」
電話の先の男は答える。
「そうです。ご存知ないですかぁ。ツイッターっていうのがありましてですねぇ」
流石の私も口をはさんだ。
「知ってますそのツイッターがどうしたっていうんですか」
「だからですねえ!」
間に口をはさまれたのが気に食わなかったのか男は大きな声で話し始める。
私は黙る。
「ツイッターで20人以上がツイートしてないとこちらとしては動けないんですよお」
しばし絶句した。
いつからそのような決まりができたのだろうかなどと考えそうにもなったが、
考えることもやめた。
電話を手にしたまま今度はドスドスと足音を立てながら玄関に向かい、
再びのぞき穴を覗く。
男は私が再びのぞき穴から外を見ている私に気付いていることはもちろん、
のぞき穴にどの程度の範囲が映っているかも知っているかのようだった。
何故なら男は私に向かって私の部屋の鍵を見せてから
『ドアを開けますよ』という顔をして見せたからだ。
そして私は電話の先にもう一度同じことを今度は感情の入った声で伝えた。
「今まさに私の部屋の前でなぜか知らないけど男がカギを開けようとしてるんですよ!」
電話の先の男はこう言う
「ですからぁ。ツイートがないとこちらは動けないんですよオ」
私はドアチェーンをかけながら電話口にやや冷めつつ言う
「ツイートツイートって、あなた面白いですね。他の人いないんですかね」
(当初から夢と認識してみた夢)
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