私が海にゆきたかったワケは深夜の海鳴りを聴いたときにわかりました。
隣の住人が引っ越す気がずっとしていた。
何度も、何度も、らせん階段を上り下りする
ドスドスとした足音が止まないので
不快に思った私は少しだけドアを開けて外を見てみた。
引っ越し業者と思しき男性が箱をいくつも運ぶ光景がそこにはあった。
それからいくつかの住人女性と業者のやり取り。
隣の住人は女性で一人暮らしだった。
朝、ヒールの音をカツカツ言わせ、
キーケースについた鈴の音を鳴らしてカギを開け、
バタンと戸を閉める。
そんな風に帰ってきたかと思えばそのすぐ後には出かけていく。
夕方になって同じように帰ってきた彼女はすぐにまた出かけて行った。
昼も夜も、それぞれ仕事をしているのだろう。
それはまるで…なんでもない。
数年前から時折夜に男を連れて帰ってくることがあった。
その頻度は徐々に増えて、その声は大きくなり
その会話のテンポも徐々に上がっていった。
最近では夜だけではなく昼間に男の声が聞こえることが増えていた。
二人が私の隣の部屋以外でどのような時を送っていたのかは知らない。
だけど私は彼女がその男とどこかに引っ越すのを感じていた。
そして今日たくさんの荷物が隣の家から出て行った。
きっと彼女は男とどこかに住むんだろう。
一度も会話をしたことはないけれどサヨナラ。
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