2013-02-14

漂流する世界の片隅で 1 “少年と少女の場合”


私の愛は私を救うのだろうか。
私を救う愛は誰かの足しになるのだろうか。

システムに首輪をつけられてヒモでつながれていても
自分なりの輝く何かを大事にすることはできるんじゃないかと思ってる。
でも生きているならそのシステムに文句をつけないといけないのだろうか。

ハリボテの壁に皆がおびえている。
ハリボテだと気づいても誰も壊そうとはしない。

砂時計の中の砂が綺麗。
だけど誰も砂時計を壊して取り出そうとはしない。
取り出した砂は本当に綺麗なんだろうか。

硝子越しの砂と硝子から出した砂のどちらが本物かもわからない。
本物であることの意味ってあるんだろうか。
本物、と、普通、は似ている。




ハートの石を沢山集める少年。
大中小色とりどりのハートの石がベッドサイドに沢山ある。
ハートがすきなんだねと話しかける。
だけど彼は首を振る。
好きじゃないよ。キライだよ。
じゃあなぜ集めてるの。
なんとなく。
キライなものを持っていて嫌な気持ちにならないの。
キライだけどハートの石は僕と話ができるんだ。
石は僕のことが好きだから。

君の好きなものはなに。
僕は星のかけらを探してるんだ。
星がすきなんだね。
うん。本当に好きだよ。


星のかけらを集める少女。
彼女も星なんて好きでもなんでもない。
じゃあなぜ集めてるの。
星がかわいそうに見えたから。
だけど星のかけらはすぐに逃げてしまうの。
私が本当には星を好きじゃないって気づくのよ。
お星様はわがままだから本当のすきを探し回ってるの。
本当に好きで持っていてくれるヒトを探すんだね。
えぇでもこの世界には本当のすきなんて無いのよ。

君の好きなものはなに。
私は私が好き。
ほかには。
ほかに信じられるものなんてないじゃない。



少年と少女が出会う。
少女が少年に星のかけらを見せる。
少年は少女にハートの石を見せる。

少年は星のかけらを欲しがる。
僕は星のかけらが本当に好きなんだ。
僕のハートの石をあげるから星のかけらをおくれよ。
少女はハートの石を見て言う。
あなたの石はあなたのことが大好きみたい。

知ってるよ。
だけど僕はハートの石を好きではないんだ。
だから交換してもいいんだ。
少女は言う。
私も星のかけらを好きというわけではないからあなたにあげるわ。
だけどハートの石はいらない。
どうして。
かわいそうだからよ。
私は綺麗な砂を探すことにするわ。

少年はハートの石と星のかけらを彼の机にしまった。
星のかけらは彼のところから逃げなかった。
だけど少年と話をすることはできなかった。
少年はそれでも星のかけらが好きだった。
毎日磨いて大切にした。
そして相変わらずハートの石とも話をした。
ハートの石は磨かなかった。
だけどその石はいつも綺麗なままだった。
少年はハートの石のことを好きになった。
星のかけらも好きだった。
どちらも大切にした。



少女は砂を探していた
クリスマスの夜に夢の中で少女はその砂を見つけた。
だけどどこに行っても砂はみつからなかった。
やがて少女は砂がどこかにあると信じている少女自身に気が付いた。
私が信じている、私、が信じていることは、信じられないものなんだわ。

ある日少女は町で骨董品屋をみつけて足を踏み入れた。
そこには1日を測るための砂時計があった。
大きく滑らかな円錐形がふたつくっついた巨大な硝子の中にその砂は入っていた。
見る角度によって光り輝く色を変える黒い砂は少女が探していたまさにそれだった。
商人にこの砂時計をくださいと少女は言う。
だけどとても買えない値段だった。

商人は言う。
この砂時計は私のお気に入りだから売りたくないのさ。
だからこの値段なんだ。
君もこの砂時計が気に入ったんだね。
少女はうなづく。
この砂が欲しいの。
こんなに綺麗な砂は見たことが無いわ。
一体どこに行けばこの砂が手に入るのかしら。

この砂は、星のかけらを砕いた砂だよ。
と商人は微笑んだ。



少女は急いで少年の元に走った。
そして少年に星のかけらを返して欲しいと伝える。
少年は理由を尋ねる。
そのかけらを砕いて砂にしたいの。
私はその砂を求めているのよ。
少年は星のかけらを砕いてほしくはなかった。
だけど少女が見たことも無いほど必死になったので彼女に星のかけらを返した。
少年はその夜久しぶりにハートの石を磨いた。
少年はそのころには星のかけらよりもハートの石のことを気に入っていた。

少女は手に入れた星のかけらを持ち帰り紙の袋に入れてハンマーで叩いた。
星のかけらはパリンと乾いた音を立ててだんだん小さくなり5回も叩くとさらさらの砂になった。
ひとつずつ丁寧に少女は星のかけらを砕いていった。
さらさらの砂になった星のかけらを透明なビーカーにそっと移した。
探していた砂がそこにあった。
やっと見つけたわ。
私が好きなものはこれよ。
少女は砂の入ったビーカーにそっと布をかぶせて眠りについた。

だけど翌朝ビーカーの中身は空っぽになっていた。



少女は肩を落としてあの商人のいる骨董店に行った。
空っぽになったビーカーも持っていった。
商人は言った、
星のかけらはかけらのことを好きなヒトを探していただろう。
砂になるとその欲はますます強くなるといわれているんだよ。
だからそんなコップに入れていたら一晩のうちににげてしまうさ。
こんな風に出口の無い硝子につめておかないとね。
星の砂はなかなか思い通りには行かないんだよ。

私は砂のことが大好きだったわ。
夢にまでみて必死に探してやっと手に入れたの。
本当に大好きだったのよ。
なのに消えてしまったわ。

そんなに星の砂のことがすきならば星のかけらも好きになったかい。
もう一度星のかけらから集めて砂にしてごらん。
この店で砂にするといい。
すぐに砂時計にしてあげよう。


少女はまた星のかけらを集めることにした。
そして砂にできる数が集まるまで毎晩磨いた。
星のかけらのことも好きになっていた。
そして集まったかけらを骨董店にもって行き砂時計のネックレスにしてもらった。




少年は少女が星のかけらを持っていってしまってからしばらくは星のかけらのことを時折思い出した。
そしてハートの石を磨きながら星のかけらの話をした。
星のかけらは今も綺麗かな。
ハートの石は少年にささやく。
えぇあなたが毎日磨いていたもの。
きっと綺麗なままどこかで輝いているわ。
少年はハートの石を大切にした。
ハートの石は磨けば磨くほど星のかけらのように輝いた。





ハートの石を大切に磨く少年。
ハートがすきなんだねと話しかける。
うん本当に大好きだよ。

星の砂時計を首からさげている少女。
星がすきなんだねと話しかける。
えぇとても好きよ。

少年と少女は美しく微笑んだ。
ハートの石と星の砂は美しくきらめいた。




(漂流する世界の片隅で 1)

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