その部屋には窓がなかった。
ドアもなかった。
自分がいったいどこからここに入ってきたのかわからない。
この後どうやって出て行くのかの見当もつかない。
部屋はおそらく円柱の形をしていると思われた。
天井は白く、果てが見えなかった。
どのくらい上に天井があるのかその距離感をつかむことができない。
顎と額が水平になるような形で上を見ていると自分の目の前に天井があるようにも思われた。
だが手を伸ばすとつかめる距離にはなく飛び上がってみてもぶつかる気配はない。
自分がいる位置と天井までの距離を測る方法はどうやらなさそうだった。
天井を見続けるには首も疲れてきたので足元に目を落とす。
床もまた白かった。
つま先で立ってみる。
床は固くもなく柔かくもなかった。
ただ自分自身の体重によってつま先あたりの血液の流れが圧迫された。
床は、普段家からろくに出ない私の足よりも白くひんやりとしていた。
私は裸足でその白い床に立っていた。
私は靴を履いていなかった。
靴を履いていないことは私を不安にさせた。
あわてて周りを見回すが、靴はなかった。
気がつくと私はまばゆいほどに白い(その白さには本当に果てがなかった。)床と天井ばかりを見ていた。
そうしているうちに自分が今何かの建物の中にいるのか外にいるのかも見当がつかなくなっていた。
ただ漠然と、そこは地下であると感じた。
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