2021-10-06

なんでもない日のこと

 




ずっと行きたかったところへ行った。

その帰り、しばらく飲んでいないような気がして日本酒を手に入れることにした。


なんとなく、福島県のお酒が飲みたくて、福島の列を眺めていたら

”ゆり”

と書いてある箱を見つけた。

どんな味がするのかな、と思うより先に箱を手に取って会計へ向かう。




帰りはバスにしよう。

そう思ってバス停へ。

すっかりべたつきを忘れた風が気持ちいい。




バスに乗って揺られる。

途中のバス停から荷物をたくさん持った女性が乗り込んできた。

席をゆずろう、と思うより先に席を立ってどうぞと話しかける。


彼女は

”あ、次のバスで降りるからいいわよ。でもありがとう。”

と言う。

私は何故か少し泣いてしまう。

サングラスしててよかった。




ありがとうと言われるだけでうれしくなる。

バスの中に、かつて私が座っていた、今は誰も座っていない席がひとつだけあった。

彼女も私も座っていない。


だけど彼女は私にありがとうと言い、

私は彼女から言われた言葉に心が動く。

心が動く、そのために生産性も社会性も必要ない。

ただ彼女がいて私がいて、言葉だけがあった。




自分を信じるとも信じないとも

判断しないうちに繰り出される

反射的でクリアな行動が致命的に足りないことに気が付く。




家の近くのバス停で降りる。

なんだかとてもうれしい気持ちになる。

バス停の近くの花屋さんでダリアに出会った。

彼女を連れて帰ることにした。





0 件のコメント: