2019-06-15

おじいさん、歯車、蟻。



立派な白いひげを蓄えて緑色のパジャマを着たおじいさんがいる。
耳に鉛筆を引っ掛けている。
おじいさんは言う。

  おい小僧、手伝え。

おじいさんに黙って付いていく。

おじいさんが指を鳴らす。

  パチン

すると少し離れたところにあったみかん箱からいくつかの歯車がすべり出てくる。
どうやって動いているのか気になったので歯車の方に恐る恐る近づく。
そしてぎょっとする。

大量の蟻が歯車をせっせとおじいさんの足元に運んでいる。
運び終えた蟻はすぐにみかん箱へ戻りまた新しい歯車を運び出す。

  パチン

再びおじいさんが指を鳴らした。
すでに箱の外にある歯車をおじいさんの足元に運んでしまった蟻たちは箱に戻ったきり出てこなくなった。



おじいさんが目で訴えてきたので歯車を拾って両手いっぱいに抱える。

  よし、ついてこい。そいつは割れやすいから落とすなよ。









建物の奥へ奥へと進んでいく。
おじいさんは終止無言。
5分ほど進むと壁が見える。
おじいさんは立ち止まりふりかえって、無言で歯車のうちのひとつを手に取る。

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